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『森と草原の歴史 日本の植生景観はどのように移り変わってきたのか』古今書院
小椋純一

日本の植生の移り変わりを研究している著者による現時点での集大成ともいうべき1冊。

植生の研究というのはかなり難しいようだ。
著者は古い写真や地図、それより前の時代は絵画や文献を対象として日本の植生を研究している。さまざまな文献に出てくる決して統一はされていない植生の表記。風景や人、建造物を主体とした絵に描かれる風景としての植物。これもまた決して正確に植生を表現しているかどうかは怪しい。写真にしても植生を記録しようとした写真なんてあまりないわけで、その植物が「マツに見える」や「スギに見える」などの観察と、現在の植生を比較しつつ確認する。写真ですら古いものをたどり、戦前まで遡ると今とはだいぶ植生が違うことが多い。
著者はさらに土中の植物の微小な炭を調査し、絵にも描かれていないような過去や地域の植生まで調査をする。
ただ、植物の生息状況の調査という接点は同じでありながら、結論に至るための手法はあまりにさまざまであり文献調査や絵図の調査というとどちらかというと民俗学の調査のように見える面もあるが、炭の調査となると明らかに違う。

著者は巻末になぜ、彼がこのような調査を続けているのか、少しだけ心情を吐露している。

あまりにまっすぐに恐らくはあまり社会に有用、利益的とも思えないこの調査を長年続けてきた著者の姿に言い知れない尊敬の念が生まれた。そんな1冊。
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