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『トポグラフィの日本近代 江戸泥絵・横浜写真・芸術写真』
佐藤守弘 青弓社

江戸泥絵とは、江戸時代に参勤交代で地方より江戸に来る下級武士のお土産として江戸屋敷を描いた風景画のこと。強い遠近法と「プルシアン・ブルー」という独特な青を使用した絵。
横浜写真は、明治時代になってから外国の観光客用に撮られた「日本らしさ」を強調した西洋の文明に「毒されていない」土着の姿を主とした写真。
芸術写真は、日本人が「風景」を「発見」した近代、記録としてではなく、表現の主体として撮影された写真である。しかし、その芸術写真は絵画でも写真でもない雑種という評価さえされてしまっている。

江戸泥絵も、横浜写真も、芸術写真もいずれも従来は芸術としても記録としてもあまり評価をされてこなかったようである。
筆者は、これらのものをアイデンティティを確認する装置として焦点を充てる。
私が印象に残ったのは、「どこにでもありそうなもの」を切り取ることで、個々人の中に郷愁や帰属意識、連帯感を生み出そうとする行為としてこれらについて筆者が論じた点にある。筆者が紹介したものの中に童謡「ふるさと」がある。
ふるさとの歌詞は多くの日本人が郷愁を誘われるものである。私自身、あの歌にあるようなふるさとは全く原風景としてはない。しかし、あの歌を聴くと「ああ、いいなあ」とか、「ふるさとかあ」などと思う。私と同様に、あのような風景を幼い頃に体験せず、しかしあたかも日本の象徴としてあの歌を認識している人は多いのではないか。私は、このようなある種の虚構としての原風景を生み出す行為に興味を持った。
昭和歌謡の1つ、「木綿のハンカチーフ」も、地方から働きに出た人々の姿にシンパシーを持った当時の人々に受けたのだと思う。今ではあの歌の内容は理解できない人々も増えたのではないか。あれも昭和の「ふるさと」ともいえる。

あるいは明治以降の平安神宮や時代祭りなどの京都の「京都らしさ」という虚構。

いろいろと想像を膨らませることができる。非常におもしろい本だった。
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